認知症
2011年04月03日
認知症の新たな治療について
医学の進歩とともに、人間の寿命は80年を超える時代になってきました。それとともに出会う問題が認知症です。認知症の最大の危険因子が加齢だからです。高齢化とともに認知症は増加し、現在120万人。2020年には200万人になるともいわれています。
●認知症の証拠(病理学)
脳の神経細胞の中に、「老人斑」というシミと神経原線維変化という固い滓(カス)が出来てきて神経が壊れて行きます。この原因が最大の謎で、いまだに解明できていません。しかし、メカニズムはだいぶ明らかになってきて老人斑のもとになるβアミロイドが沈着するためとされています。
●治療薬の種類
これまで、βアミロイドを減らしたり溶かしたりする薬は開発されていません。しかし、脳の働きを活性化するアセチルコリンというホルモンを増やすお薬が認知症の進行を遅らせることがわかっています。この薬の代表がアリセプトです。
今年、このアリセプトに加えてもう一つアセチルコリンを増強する薬が認可されました。それが「レミニール」です。これはアセチルコリンを増やすだけでなく、受容体を活性化することで認知症状を改善するとともに進行を抑制します。
もう一つ新しいメカニズムの薬が「メマリー」です。これは脳神経細胞のグルタミン酸NMDA受容体を阻害することで過剰な神経活動を押さえ、神経細胞を保護するもので、アリセプトやレミニールと併用できます。これらの新しい薬を上手に使うことで認知症への対応がより幅広くなります。
●よくある質問
Q;この認知症薬は認知症の誰でも使えるのでしょうか?
A ; いいえ:アルツハイマー病のみに使用できます。軽症の物忘れ(正常範囲の)には使用できませんし、却って、胃腸症状など副作用がみられることもあります。また脳梗塞や前頭側頭葉型認知症などには使えません。
Q ; 新しい薬とアリセプトは同時に使えますか?
A ; グルタミン酸受容体拮抗剤のメマリーはアリセプトやレミニールと併用できます。しかし、同じ薬効のアリセプトとレミニールは併用できません。
Q ; 脳の記憶や思考力は改善しますか?
A ; 残念ながら、著名な改善は見られません。現在の記憶力や認知力を維持するためのお薬です。内服と平行して頭の体操や適度な精神的刺激を受けることが大切です。