脳梗塞の予防と治療
2011年05月05日
脳梗塞の予防と治療について
脳梗塞は、血圧治療が進歩しつつある現在、軽症化しつつあるともいわれますが、実際はけして油断できません。欧米化した食生活で、悪玉コレステロールが増えた血液が流れる血管内にアテローマ(血管内皮細胞と脂質、線維からなる動脈硬化巣)が形成され、ここに血栓が詰まったり、ちぎれて脳血管に詰まったりする例が増えているのです。また高齢化とともに増加する不整脈、特に心房細動から血栓が飛んで脳内に詰まる心源性塞栓症が増加しています。
今回は、予防と治療の新しい流れについてお話しましょう。
●おかしいな〜と思ったら
脳梗塞は突然に意識を失って倒れたりすることは意外と少なく、一時的な手足のしびれや脱力、ろれつが回らない〜話が聞き取りにくい、視力が低下し視野の一部が見えにくい、など本人も意外と気がつきにくい症状で発症し、家族からおかしいと指摘されることも多いのです。上に記した症状は一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれ、大きな脳梗塞の前兆と考えられています。明らかに普通と違うと思ったら、すぐかかりつけ医に連絡しましょう。
●どんな治療をすることになるか
一過性脳虚血発作は余震のようなもので、大地震の前触れと考えましょう。大地震で脳が倒壊する前に、地震の源を絶つことが大事です。アテローマ血栓が血管内にある場合、血栓が詰まる予防としてアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールという薬が使えます。心臓内血栓が疑われる心房細動の方にはワルファリンですが、最近食べ物制限(ワルファリンには納豆や海藻等の制限があります)がなく、毎月の血液検査も必要ない新薬-ダビガトラン(プラザキサ)が使用可能になりました。血液の流動性を保ち、血栓が詰まらないようにするには、食事の脂質制限も大事です。
●脳梗塞になってしまったら
糖尿病や不整脈などの基礎疾患がある方は、不摂生(多量の飲酒や喫煙、不規則な生活)により高率に脳梗塞が生じます。もし夜間や休日などに、突然手足の麻痺や意識障害、言語障害が起きたら!?—–まずすぐかかりつけ医に連絡しましょう。相談の上、脳梗塞の可能性が高い時は、脳外科医が3名以上いてCTとMRIがある救急病院に紹介してもらいましょう(もしかかりつけ医に連絡がとれなくても病院には連絡しましょう)。発症して3時間以内に血栓溶解のアルテプラーゼを注射することで、放っておけば言語障害、手足の片麻痺を起こす方でも劇的に軽快する可能性があります。糖尿病と高血圧、高コレステロールの方は主治医といざという時の対応を相談しておくことが大事です。
脳梗塞は心筋梗塞と同じ、急性病変!
素早い対応が大事!